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腐川軟禁-待降節を過ごす密やかな25の話-

クリスマスまでの毎日を少し退廃的に過ごす十神と腐川の二十五日間。 ショートストーリーを一日一本公開予定です。

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花見に

 十神と腐川は日に一度、散歩に出るようにどこかへ出かける。それ以外の時間は図書室に籠っている。数日続けば嫌でも他の者の目につく。監禁生活前は、腐川も自由に寝起きして執筆の合間に好きなことをしていた。ある時を境に十神と腐川は完全に行動を共にしている。二人の不自然な行動は寄宿舎内では奇異に映る。

 その日も十神と腐川が移動しようと図書室を出た時に、不二咲千尋とすれ違った。どうやら図書室に入りたくて様子を伺っていたらしく、遠慮がちに尋ねてきた。
「あの……中に入っても、いいのかな?」
「俺に何を訊くことがある?図書室は公共の施設だろう。」
 奥の書庫を私物化してるのは他ならぬ十神ではないか、と不二咲は内心思ったが、わかったよ、と答えて観音開きの扉を潜り抜けた。どうしても情報処理関連の資料が必要だったのだ。二人が図書室で何をしているかなどという噂には興味が無かった。只、図書室に入るとそこはいつもと変わらぬ清冽な空気に包まれ、とても不埒な行為が行われるような場には見えなかった。

 十神と腐川は、五階の武道場に向かった。窓の外に竹林の立ち並ぶ廊下。此処だけは、何故か日本的な意匠で作られている。希望ヶ峰学園には空が無い。そのため、食堂の中庭やこの階の竹林の様に、人工的な植林が施されている場所が多かった。
 武道場もその一つである。満開の桜の木が九本。本当の桜色とはどのような色であったか最早解らぬ程に、濃いピンク色の桜は狂い咲いていた。ここでは年中桜が咲き誇っているのだ。
「いつでも見られる桜というのも却って興を削ぐものだな。」
 腕を組み、武道場の床に立ち十神は言った。
「花見の真似事も悪くないと思ったが。」
「でも、綺麗です。」
「桜とは、この様な下種なピンク色だったか?紛い物で記憶が上書きされるのは不本意だ。」
「さあどうでしょう……?いつか外に出れば、確かめられるのではないかしら。」
 腐川は漠然と『いつか』外に出ることをイメージしていた。十神は腐川ほど楽観的では無かったから、それを聞いて小さく舌打ちをする。焦っても仕方がないというのに。

 腐川は十神の足元に正座をして、風呂敷包みを広げていた。腐川は十神に命じられるまま、握り飯と茶を用意していた。
「あら。」
 十神のことだから何か趣向を凝らして用意をしたのかと思ったら、素朴な竹の皮に腐川の握り飯が包まっているのみだった。地味、と言えば地味である。贅を尽くした重箱などではない。腐川が首をかしげていると、十神に開けてみろと促された。
 整然と並べられた握り飯。一つ手に取ってみると、竹の皮の裏側に、金銀の豪奢な蒔絵が施されていた。
「いつの間に、こんな」
「尾形光琳の逸話に倣って、だ。最も金箔も漆も無いから、只のアクリル塗料だが。」
 江戸元禄時代のアーティストである尾形光琳の、花見のエピソードをなぞったというのだ。友人と嵐山に花見に出かけた光琳が、豪奢な料理が並ぶ中竹の皮で包んだ握り飯を携えて来たという。その皮には見事な花鳥山水の蒔絵が描かれ、友人たちを驚かせた。食事の後、光琳はその皮を惜しげもなく大堰川に流してしまったという。
 十神の解説に、腐川は聞き入っていた。一日のうち小一時間遊びに興じる度、十神は違う顔を見せてくれる。おそらく立場ゆえに蓄積された知識や知恵であろう。普段はそのような素養を表に出さない人間が、一つ一つプレゼントの包みを開けるように見せてくれることが嬉しかった。それは、アドベントカレンダーの小窓を一つずつ開けるような。

 十神に従って二週間。監禁されて四日目。腐川は、日々小説を書き、十神の誘いに付き従い、充足感を得ながらも忍び寄るある不安に押し潰されそうだった。
 『彼女』が表に出る時が、きっと来る――。

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自己紹介:
ダンガンロンパ二次創作をかいています。主に十腐(ジェノ)固定。拍手コメントの返信は、ブログ『ぺね屋絶望ホテル』からいたします。

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