腐川軟禁-待降節を過ごす密やかな25の話-
クリスマスまでの毎日を少し退廃的に過ごす十神と腐川の二十五日間。 ショートストーリーを一日一本公開予定です。
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学級会 その1
生徒が皆食堂に集まり、あれやこれやと話し合っている。朝食会は億劫で欠席しがちな十神と腐川も、皆が集まるというならば出向かざるを得なかった。それが、最低限ここで巧くやっていくための社交術。長い生涯を共にする可能性がある仲間とつきあう術だった。
昨日の苗木誠の思いつきから、ささやかながら学園でクリスマスを祝うことになった。学園長に許可を貰い、過度にならぬ範囲でのパーティーが許可された。
「クリスマスツリーがあったんだよ!倉庫にね。」
「でも……外が大変なことになっているのに、自分たちだけ楽しい思いをするのはどうなのかなあ?」
不二咲千尋は戸惑いを隠せない。自身の持つネットワークにより、詳細な外の情報を掴んでいた。
「倉庫にツリーがあったってこたァ、……いいんじゃねえの?」
「……そうだぞ、兄弟の言うとおりだ不二咲クン!僕たちはここで生き続ける義務があるのだ。学園側が、必要だと考えて備品に入れたのならば、それは正しい選択なのだッ!」
「んなクソまじめに言ったつもりはねーけどよ……」
大和田が面食らう脇で、霧切響子が薄く笑って同意した。
「……この学園に残されたものは……ノアの箱舟のようなものだと思わない?」
ピンとこない苗木が首を傾げていると、十神がそれを受けた。
「つまり、この中にあるもの何もかもが、次世代に伝えていかねばならぬ要素であると。そういうことだな。」
「……どういうこと?」
「俺達はそれぞれの能力を最大限活かし、いつの日か外の世界を善き方向に導く触媒となる義務がある。お前等もあのビデオカメラを前に、誓約をしたはずだ。」
「それは……そうだけれど」
超高校級の幸運の能力なんてどう活かすんだろう、と尚も苗木が考え込む。
「学園の中に保存されたモノ……あるいは総じて科学や文化と言っても良い。それらが、将来滅亡していない保証は無い。」
「私たちはその科学と文化の継承をしていく義務も同時に負っているのよ。ここに入ったその日からね。……ここまで言えば解るわね?」
弁の立つ二人に圧されて苗木もやっと得心がいった。
「そうか。解ったぞ!ボクらは出来るだけ当たり前の生活をして、それを次世代に伝えていく……つまり、クリスマスを祝う習慣は、あって良いんだね!」
「だから小難しい屁理屈はいらねーっつーの!」
「いいからツリー飾るぞオラァ!」
考えるな感じろ、と言わんばかりに大和田と桑田がまくし立て、七十八期生はそれぞれクリスマスのオーナメントを手にして、食堂や娯楽室、各人の部屋の扉を飾った。
ミーティングは解散となり腐川は今日も図書室に向かう。あのような場で腐川が意見を通すことはほぼ無かった。聞き役に徹して、言われるままにクリスマスオーナメントをいくつか飾った。
何気なく真珠が糸を通っていくように過ぎる当たり前の日々でさえ、否、その日々こそが未来へ繋いでいくべき大切な経験、そして時間であること。此処に入る時泣いてばかりいた腐川が考えもしなかったことを、十神は悟っていた。それがどうにも誇らしく、嬉しかった。
今や腐川が一日の大半を過ごすのは、図書室の奥の小部屋だった。小部屋の扉を開けて机に筆記用具を置いた。ふと入ってきた扉を見ると、扉の内側に小さなクリスマスリースが飾ってあった。外からは見えない。この小部屋に足を踏み入れる者は、二人しかいない。腐川が飾り付けたものではないならば、それは。
腐川は、クスリ、と笑って自ら持ってきた小さなベルを、リースの中央にリボンで結んだ。
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