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腐川軟禁-待降節を過ごす密やかな25の話-

クリスマスまでの毎日を少し退廃的に過ごす十神と腐川の二十五日間。 ショートストーリーを一日一本公開予定です。

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腐川監禁

「目が覚めたか腐川よ。日中ずっと眠っていたのだぞ。」
 次に腐川が目を覚ました時、耳に飛び込んできたのは柔らかい低音の声。一瞬大切な想い人がつききりで側にいてくれたのかと錯覚をした。

「具合はどうだ?お主、何も食べていないのではないか?」
 ベッド脇のカーテンは開かれ、大神さくらが大柄な体に似合わず細やかな仕草で、腐川の額に手を当てた。
「あ、あたし……」
「過労であろう。心身が著しく消耗している。」
 腐川は軽く頭を振って、何故自分が保健室に泊まり、一昼夜眠っていたのかを思い出した。今は、何日の何時なのだろう。かの人はどうしているのだろう。

「今は、何日の何時なの……?」
「十二月九日。もう夜の十時だ。我がお前を見つけたのが昼前だったから、十二時間は眠っていた。」
 本当はそれどころではない。十神に長い打ち明け話をした後、糸が切れたように眠りに落ちた。二十時間も意識を失っていたのだ。
「も、もう大丈夫よ……部屋に戻らないと」
 腐川はよろよろと立ち上がり、ぼうっとする頭を振って扉に向かった。
「腐川、手を貸そう」
 大神が鍛えられた太い腕を差し出した。同性同士の気安さから、人嫌いの腐川もそれに甘えて支えにした。長い廊下を渡り、腐川は久しぶりに自室の扉の前に戻った。大神に礼を言って別れ自室に入ろうとすると、扉の下に紙が挟まっているのが目についた。ここではちょっとした伝言メモを挟むのはよくあることだった。
「何だろう」
 開いてみると、『明日になったら迎えに行く』と綺麗な字で書いてある。腐川はその字の持ち主を悟り、さっと顔に紅が差した。慌てて自室の扉を閉め、動悸で高鳴る胸を押さえつけため息をついた。
 一連の彼女の仕草を、観察している者が居た。外からは気付かぬ程に、腐川の斜め前の個室のドアは細く開かれていた。

 一日以上自室を空けていたため、腐川は部屋で細々と片づけることが多かった。気は急くが疲労の溜まった体はあまり言うことを聞かず、のろのろと手を動かしていた。
 十神白夜に自分の正体を知られてしまった。出来ることならば、ずっと秘密にして只十神のために小説を書き続けていたかった。
 否、知られて良かったかもしれない。このシェルターに入る時、何度も何度も逡巡した。閉鎖空間であの殺人鬼が顔を出せば、どんな惨劇が起こるかわからない。大切な人を手に掛けてしまうかもしれない。この空間の中で殺人事件が起これば、それはこの希望のプロジェクトの崩壊を意味する。だから、知られて良かったのだ。

 腐川は次に十神に会うのが怖かった。
 パニック状態の中十神に何を言われたのかもう良く覚えていない。罵倒の言葉はぶつけられなかったように思う。優しく介抱された気がするのは、あれは夢だったのだろうか。
(明日って、朝何時のことだろう?)
 メモにあった伝言を思い出した。七時位にでも起きていればいいのだろうか。そう思った直後、インターホンが鳴った。時計をみると、十二時。腐川は全て悟った。

「……はい」
 腐川はドアを細く開けて応対した。ドアの向こうにいるのは、十神白夜だった。
「約束だ。入るぞ」
 腐川の返事も聞かず十神は主のように腐川の部屋に入った。
「体調はどうだ?」
「は、はい。あれから保健室で休んで……今はもう大丈夫です。」
「そうか。では構わんな。」
 構わないとは何が、と腐川が聞き返そうとした時、十神は有無を言わせない口調で言った。
「これからお前の行動は全て俺が管理する。睡眠は最低七時間。執筆は今まで通り図書室の書庫で行え。食事はこちらで全て手配する。自由行動は、制限させてもらう。」

 暴論である。一介の男子高校生が、同級生女子の生活を二十四時間管理しようという。人道上、非常に危うい状況を自ら作り出そうとしている。
 しかし言われて腐川は、さして疑問を抱かなかった。いつ殺人鬼に変貌するか判らない爆弾を抱えた自分を監視するつもりなのだろうと。リスクヘッジのために十神がその手段を講じたのだろうと考えた。
「……はい。わかりました。」
「異論は、無いのか。」
「書いて眠るだけの今までの生活とあまり変わりませんし……それに、白夜様は殺人鬼の私を見張っていようとお考えなのでしょう?」
「そう思いたければそうしろ」
 軽く舌打ちをされた。

「誰かが言ってました。白夜様があたしを軟禁してるって。同じことです。あたしは構いません。」
「いや、違うな。」
 十神は少し間をおいて言った。

「これは、監禁だ。」

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ダンガンロンパ二次創作をかいています。主に十腐(ジェノ)固定。拍手コメントの返信は、ブログ『ぺね屋絶望ホテル』からいたします。

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