腐川軟禁-待降節を過ごす密やかな25の話-
クリスマスまでの毎日を少し退廃的に過ごす十神と腐川の二十五日間。 ショートストーリーを一日一本公開予定です。
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腐川消失
十神は、腐川の描くストーリーがいよいよ佳境に入ってきたので集中することが必要なのだろうと考えた。また、それに比例してその推理小説は面白い物になっていった。
「白夜様、出来ました。」
腐川が書斎から出てきて小さく十神に声をかける。十神はいつも通り原稿用紙の束を受け取る。
腐川は、手洗いに行っても良いかと許しを乞うた。そんなことですら、腐川は律儀に十神の許可を受けることにしていたのだ。
「すぐに戻ります」
腐川は図書室を出ていった。
十神は腐川の小説の続きを読み始めた。面白くて引き込まれる程の魅力的な文章である。十神は、腐川が図書室に戻ったというのに、気配で察しながらも読書に没頭していた。顔も上げずに、「腐川、コーヒーだ」と命じてまた続きをむさぼり読んだ。
「白夜様……」背後から小さな声がして、十神の好みのブレンドが机上に置かれた。視界の端に長い三つ編みが揺れるのを捉えながら、「ああ」と礼ともつかぬ生返事をしてカップに手を伸ばした。
背後では腐川が書斎に戻ったようだった。扉を閉める音がした。扉に下げたクリスマスのベルが微かに音を立てた。
異変はこの時に起こった。
「うわああああああ!?何するんだべ!?腐川っち!!」
外の方から只ならぬ叫び声が聞こえ、十神は我に返った。あの声は、葉隠康比呂だ。
(腐川だと……?)
腐川なら、いつも通り隣室に籠もっている。廊下の様子が気になるが、十神は書斎の扉を細く開け、机に向かう腐川の背中を視認してから足早に廊下に出た。
図書室前の廊下は少し幅広になっていて、向かいの壁の奥に、葉隠が居た。正確には、壁に鋭利な刃物でシャツの袖を数カ所貫かれ磔にされていた。
「と、十神っち~!は、早く助けてくれよ~」
見たところ命に別状は無いらしい。シャツの袖に刺さっていた鋭利な刃物、十神はそれに見覚えがあった。デコラティブで大きな鋏……それは、間違いなくジェノサイダー翔の得物だった。
張り付けられた先は、何の皮肉か掲示板だったことも幸いして、一つ一つの鋏を抜くのはたやすい作業だった。
(あいつが出現したというのか……?)
「ふぅ~助かったべ!サンキュ十神っち!」
「誰がこんなことをしたんだ?」
「ふ、図書室から出てきた腐川っちが……俺を見ていきなり切羽詰まった顔で鋏を突きつけてきて……」
「腐川が……?」
この場合はジェノサイダー翔を指すのだろう。他の者はジェノサイダーの存在を知らない。
「……そうだ、腐川……!」
十神は、書斎に残してきた腐川の存在を思い出した。何かの間違いでなければ、腐川はずっと書斎で小説を書いていた筈だ。十神は図書室の扉を開け、書斎に飛び込んだ。
「腐川!!」
書斎に一つ置かれた机と椅子。書き散らした原稿用紙の束。その中心にいる筈の腐川の姿は……消えていた。
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