腐川軟禁-待降節を過ごす密やかな25の話-
クリスマスまでの毎日を少し退廃的に過ごす十神と腐川の二十五日間。 ショートストーリーを一日一本公開予定です。
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
学級会 その2
その日、腐川は二時間の外出許可を求めた。
腐川は十神の監視の目から外れる時は、自己申告をしていた。大抵は、洗濯だの入浴だの身の回りの当たり前の営みを申し出て、三十分程度で足早に戻ってきていた。十神に烏の行水だなとからかわれたこともある程に。
「呼び出し、だと?」
腐川は寝起きの時間まで指定され、三食は十神により管理されて、それ以外の時間は小説を書く。日に一度、十神は腐川を一時間程外に連れ出す。それは気分転換でもあり腐川の執筆のヒントになることもある、二人の密やかな時間だった。
そのサイクルから著しく外れる外出となる。それも『呼び出し』だという。十神の脳裏にある種不穏な予感がよぎる。この監禁生活を誰かが身咎めたのか。学園長か、それとも。
「女子でクリスマスパーティーの料理の分担をするからら……ですって。」
それなら十神にも合点が行く。男子は男子で、飾り付けがどうのという連絡が来ていたような気がする。最も十神はサボタージュを決め込むつもりだったが。
「まあ、いいだろう。好きにしろ。」
「……ありがとうございます」
腐川は頭を下げて、時間になるとそっと図書室を出ていった。
女子一同は食堂に会し、大きなテーブルを囲んで話し合っていた。
「じゃあ、肉料理の担当はさくらちゃんと私!ああ、腐川ちゃんは、ケーキをお願い。」
「じゃあ私はスープね。」と霧切響子。
そして他の者にもスープだのサラダだのクリスマスメニューを割り当てて、朝日奈は満足げに頷いた。
「セレスちゃんは……どうしよっか?」
「何でも構いませんわ。手を動かすのは山田クンですもの」
セレスはにこやかに返した。
「私は……何をすればいいんですか?」
舞園さやかが小首を傾げて尋ねた。朝日奈は予防線を張って、
「そうだね、ラー油関係ないとこ……腐川ちゃんと一緒にお菓子焼いてよ!」
「解りました。腐川さん、よろしくお願いしますね?」
「わ、わ、解ったわよ……どうしてもって言うならしょうがないわね!」
役割分担が終わってしまえば、後は只の女子会みたいなもので、皆テーブルの上にスナック菓子などを広げ勝手なことを喋る。身の回りに起きたおかしな出来事で笑い転げたり、他愛もない噂話をしたり。超高校級の能力を持つ女子達も、何ら変わりは無いのだ。
「そうそう腐川ちゃんって、結局十神と付き合ってんの?アイツが彼氏になるとどんなカンジなわけ?」
朝日奈があけすけに質問をぶつける。
「な、な、何いってんの……!?そんなんじゃ無いわよ!あたしと白夜様は……もっと」
もっと、の先は口ごもって言えなかった。付き合うだの彼氏だの、俗な言葉で片付けて欲しくなかった。もっと崇高で高潔な関係、文学を鎹に解り合った者同士なのだ。
「でも、ずっと一緒に居るよね」
「そ、それは……」
もじもじと視線を逸らした先に、食堂の壁に掛けられた時計があった。間もなく十神に約束した時間になろうとしている。
「あ、あたしもうすぐ戻らなきゃ。じゃあ、じゃあね……」
腐川は逃げるように食堂を後にした。第三者が十神の名を出すだけで動悸が高まる。後に残された者達が、どんな
無邪気な噂話をしようが構わない。耳を塞ぐようにして寄宿舎のホールに戻った。
監禁生活の日が経つにつれて、腐川の内では不安感ばかりが増大していた。十神に導かれるままに小説を書き様々な遊びに興じていても拭えない不安を抱えている。あの女が侵食してくる頻度が増している。
”その”時期が来たら、自分でもどんな風になってしまうのか予想がつかない。今までは、体調不良と称して自室に籠もっていたけれど。
助けて欲しい。
「腐川さん……?」
焼き菓子のレシピを渡そうと食堂から追いかけてきた舞園は、その場にしゃがみ込む腐川を見つけた。
カレンダー
| 03 | 2026/04 | 05 |
| S | M | T | W | T | F | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
